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お盆に関西へ帰った際に、たまたま訪れた阪神百貨店で催されていた
鉄道模型フェスティバルの物販スペースで、
面白そうな本が売っていたので思わず買ってしまいました

鐵道線路 矢野常一著
Panasonic_P1120389.jpg
きちんと検印もある奥付によると
発行は大正15年(1926年)5月15日
定価 一圓七十銭
送料は内地 十八銭 植民地(!) 四十五銭となっています
ちなみに3000円で購入しましたので、実に価値が1700倍になってますw

さて本題、83年前の本ではありますが、その内容は現在でも十分通用します
それゆえ旧仮名遣いや旧漢字で示された内容はとても興味深いものとなっています
そんなわけで、用語解説の部分に関して抜粋してみました

鐵道
 軌條を布設して線路を作り、其上に動力を用ひて車輛を運轉(運転)せしむるもの。

鐵道線路
 堅固なる地盤の上に道床を敷き、其上に枕木を並列し、此の枕木の上に、二條の軌條を平行に敷設したものである。
 此の内道床以上の部分を總稱(総称)して軌道と云い、軌道の土臺(土台)となるべき軌道下の地盤を路盤と稱し、路盤の表面を施工基面と稱するのである。

踏切設備
 普通の道路が、鐵道線路を横斷する時に、兩方の路面が一致して居る時は之を踏切道と云ふ。

軌道(Track)
 道床を一定の形に敷き均した上に、枕木を一定の間隔で並べ、其上に普通二本の軌條を定められたる距離に据付け、其の繼目には繼目板で確りと挾みて「ボールト」で締め、犬釘で枕木に打ち付け、常に一定の軌間を保たしめて、列車が安全に其の上を走り得る様に、施工基面上に構成された鐵道線路上の重要なる一部分。

軌間(Guage)
 軌條頭部の内側間の距離を指して云ひ、其の廣狹は、鐵道の建設費並に運搬力に至大の關系を有するのである。
 現今歐米諸國に於て、最も廣く用ひられて居る軌間は、四呎八吋二分の一(4ft8.5inch=1435㎜)で、普通之を世界の標準軌間と稱し、之より狹いものを狹軌と云ひ、廣いものを廣軌と云ふのである。 我國有鐵道では之を三呎六吋(3ft6inch=1067㎜)と定められて居る。

道床(Ballast)
 路盤と枕木の間にあつて、列車の荷重は勿論、軌條及同付屬品並に枕木等の重さを均一に、且つ平滑に路盤に傳ヘ(伝え)しむる材料であって、主として砂利又は碎石を用ふるものであるが、砂利の少い場合には砂を混入して使用することがある。

枕木(Sleeper or Tie)
 軌條と道床の中間にありて、軌間を正確に保たしめ、且つ軌條の上を通過する車輛の重量を道床に傳ふるに際して、更に廣い面積に均一に配布せしめん爲に設置せらるゝ材料である。

軌條(Rail)
 現今我國に於て、一般に使用されて居る軌條は良質な鋼鐵を輾壓(転圧)して製造したるものであつて、此の種類の軌條は、底が平になつて居る處(ところ)から、平底軌條又はT型軌條と稱せられて居るのである。
 軌條には此の型の種類の外に、兩頭軌條と云つて、頭部と底部とが同じ樣な形をしたものがある。此の種類のものは英國に主として使用され、其外歐洲の大陸地方にも使用され、我國に於ても鐵道の創設された頃は此の種類の軌條を使用して居たのであるが、現今では殆んど使用して居ないのである。
 軌條斷面の形状は、最初から出來て居たものでは決してなく、澤山の學者や技術家が、種々工夫の結果、同一分量の鐵材で作つて、最も強くして車の重さで折れたり曲つたりしない樣、其の上を走る列車の爲めに磨耗することの少い樣、枕木上に据りのよい樣、枕木に取付易い樣、製作の仕易い樣など、色々の理由と實驗(実験)との上から、幾多の變遷(変遷)を經て考案され、其の結果今日の樣な形のものになつたのである。

接目(Joint)
 軌條を敷設するには、準じに接續して行かねばならぬ。此の接續點(接続点)を接目と云ふのである。
接目を枕木の上に置くか、又は枕木と枕木の中間に置くかによつて「サツポーテツトヂヨイント(Supported Joint)」と「サスペンデツドジヨイント(Suspendet Joint)」とに區別せらるゝのである。前者は一見丈夫な樣に思はるゝのであるが、多年の經驗(経験)によると、結局後者の方が良好な接方であると云ふことが明になつて、現今では一般に、此の方法に依つて居る。

犬釘(Dog spike)
 平底軌條を枕木に緊結して、一定の軌間を保たしむるには、現今最も普通に犬釘が使用されて居るのである。
 犬釘は、鐵若くは鋼鐵製のものであつて、其の斷面形は、枕木と確り結合の出來る樣な角のある四角形である。其の下端は枕木の纖維を害することなく、枕木の筋目に直角に打ち込むことの出來る樣に、鑿(のみ)形に尖らしてある。其の頭部は、犬の耳の樣な形状をして、一方に屈出して軌條の底部を壓さへて枕木に結合せしむることゝなり、尚頭部の兩側に突起を附してあるから、軌條や枕木の交換の際には之を引き抜くのに便利な樣になつて居る。

高度(Cant)
 直線々路上に於ては、兩軌條の上面は常に同じ高さに置かなくてはならぬ。然しながら、曲線々路上に於ては同じ高さにすることは出來ぬのである。
 列車が曲線軌道を通過する場合には、遠心力の作用によつて車輛は曲線の外方に倒されんとする處の傾向がある。其故に、曲線部に於ては外方の軌條を内方の軌條より高くするときは、重力の作用によつて遠心力の爲めに外方に倒れんとする力と相殺して、車輛は安定を保つことが出來るのである。斯の如く外方の軌條を内方の軌條よりも高くすることを高度を附すと稱し、其の高くする度合いを高度と稱するのである。

擴度(Slack)
 線路上を通過する車輛や機關車には、其の構造上固定輪軸距と云ふものがある。
 今車輛や機關車が、直線々路上を運轉する時には、軌條と車輪の突縁(フランジ)とが、車軸の眞下で接觸して居るので、何等差支へが無いから軌間を正しく一米○六七(三呎六吋)として置かねばならぬのであるが、曲線上を運轉する時には此の固定輪軸距の大なるものは、曲線半徑の小なる線路上に於ては、軌條と車輪の突縁との接觸點が、車軸の眞下から幾分外れる樣になるために、直線と同じ軌間では、車輪と軌條が軋り合つて、滑かに運轉することが出來なくなり、從つて軌間及軌條を損じるのみならず、脱線等の危險をも生ずるに至る虞(おそれ)がある。其れ故に、所定の固定軸距を有する車輛の運轉に差支へのない樣に、内側軌條を少し内方に擴げなくてはならぬ。此の擴ぐ可き寸法を、擴度と稱し、軌間を擴げることを擴度をつけると云ふのである。

轉轍器 及 轍叉(Point and crossing or Switch and Frog)
 轉轍器と稱する一つの部分と、轍叉と稱する他の部分より成る、一組の装置であつて、一つの軌道の途中に於て、他の軌道を分岐せしむる爲め、軌條に施したる特殊の装置の總稱である。
 軌道が分岐し初むる近傍を轉轍器と稱し、兩軌道が愈(いよいよ)分離せんとして、二本の軌條が互いに交叉して居る箇所の近傍を轍叉と稱するのである。

尖端軌條 及 基本軌條(Point Rail or Tong Rail and Stock Rail)
 分岐せる二線の、何れの線路に車輛を通ずべきやを仕分けするには、轉轍器の箇所に於て終わつて居る二本の軌條の端の一部より尖きの部分が、兩方同時に左右に動かされ、其の外方に位して居る二本の軌條の何れの方に密著せしめらるゝかによるのである。
 此の部分の軌條を尖端軌條と云い外方の軌條を基本軌條と云ふ。

轍叉の構造
 轍叉の場所に於て、二本の軌條の交叉する點には、車輛突縁の通過することを得べき、空隙を存置せなくてはならぬ、此の必要上、轍叉の構造は翼軌條(Wing Rail)と鼻端軌條(Nose Rail)の組合はしたるものである。
 翼軌條と鼻端軌條との空隙は突縁の通過を許すものであつて、之を「フランジウエイ(Flange Way)」と稱するものである。轉轍器の方より、轍叉の方へ通過する車輪縁が、自己の進むべき方の、正當(正当)の「フランジウエイ」を通過せずして、他の「フランジウエイ」を通過したならば、車輛は直ちに脱線することゝなる。之を防止する爲めに、此の車輛の反對側の突縁を、護輪器によりて導き、以て此の虞をなからしむるものである。

亘線
 平行若しくは、略ぼ平行して居る二軌道を相互連結する爲に、單轉轍器及轍叉二組を、反對の位置に設置したもの。

ダイヤモンドクロツシング
 二個の軌道が、或角度を以て交叉した場合に、四箇所の軌條交叉點に單轉轍器及轍叉の場合に使用するものと同じ轍叉を設置したもの

シザースクロツシング(Scissors Crossing)
 亘線を、二組交叉してもうけたもの皍(即)ち四組の轉轍器及轍叉並に一組の「ダイヤモンドクロツシング」を設置し、且つ之を連結する軌道を設置したものを「シザースクロスオーバーロード(Scissors Cross Over Road)」又は「シザースクロツシング」と稱するのである。

三叉轉轍器
 一つの軌道の同一點、若しくは極めて相接近する二點に於て、二組の單轉轍器を設置して三軌道に分岐せしむるものを云ふのである。
 此の種類の轉轍器は、脱線其他の事故を發生(発生)する原因となることが多き故に、一般には餘り使用せられぬものであるが、場所が狹くして單轉轍器を並置する餘地に乏しき時、其の他止むを得ざる場合に之を使用することがある。

シングルスリツプスヰツチ(Single Slip Switch)
 或角度を以て交叉して居る二つの直線軌道AB線及CD線があつて、「ダイヤモンドクロツシング」を形成して居る上に、更にAB軌道とCD軌道との間に列車若くは車輛を移動することを得る樣に、AD間を連結すべき軌道を設けた装置である。

ダブルスリツプスヰツチ(Double Slip Switch)
 前記のシングルスリツプスヰツチの上に、更にBC間を連絡すべき軌道を設けた装置である。
 是等(これら)兩装置に於て、各連絡線を、「スリツプウエイ」と稱するのである。是等の装置は、用地の狹隘なる場合に利用して便利の頗(すこぶ)る多いものであるが、我國鐵道の如く、軌間の狹少なる線路に在りては、「スリツプウエイ」を經て車輛を移動する場合に其の方向が餘りに急に偏向せる爲めに、脱線し易き傾向を有するのである。

轉車臺(転車台)
 機關車を轉線又は轉向せしむるの用に供するものであつて、其の直徑は、機關車の長さによりて定まるべきものであつて、十二米乃至二十米である。
 其の構造の主要なる部分は、中央に其の全體(全体)の重量を支ふべき支點を作り、夫れより左右に翼の如く鐵桁を装置し、其の端に車輪を附け、圓形に布設したる軌條上を回轉し得る装置とし、人力、馬力、水力等を以て之を回轉し得るものである。
 此の轉車臺には上路式と下路式との二種類がある。停車場が高き築土上にあつて排水が良好であれば、桁下に溜水の虞なき故に上路式とし、排水不良の場所に於ては溜水の虞があるから下路式としなくてはならぬ。

遷車臺(トラバーサー)
 停車場内に於て、平行せる側線上に於て一線より他の一線に、機關車及其の他の車輛を移動せしむる爲めに用ゆる架臺であつて、臺下に軌條上を線路に直角の方向に回轉移動し得べき車輪を取付け、機關車又は車輛を臺上に積載して、電力、水力、又は人力によりて之を移動し得べき装置である。

車止
 車止は、線路終端に設けて、車輛が隋力其他の原因によつて、線路を過走して建造物に衝突して、之を破壞するに至ることを防止する爲めに設備するものであるが、車輛取扱に於て不注意に此車止に衝突せしむるときは、直ちに破壞することを免れないのである、只停止せんとする際多少の隋力の爲めに、進行せんとするものを防止する目的に外ならぬのである。
 故に其構造は至極簡單なるものであつて、單に軌條の終端を彎曲したるもの、又は軌條製、木製のもの、或は其の背後に盛土を爲して、萬一の場合に備ふるもの等がある。然しながら距離短小にして、機關車の如き比較的隋力の大なるものを防止せんとする場合には、斯かる簡單なる装置にありては、頗る危險である。
 圓壔(円筒)内に油或は水の如き液體を容れ、其の尖の部分に壓容したる空氣を時々押し込み置く時は、其の水壓力が恰(あたか)も「スプリング」の用を爲して機關車の隋力を減ぜしむるのである。之を氣壓式車止と稱する。
2009.09.18 (Fri) 23:55 CM2. TB0.
[ 趣味・実用 : 鉄道 ] [ 分類 : 保線の仕事 ]
[ タグ : 解説 ]
  
コメント

おはようございます。
定価の1700倍の本とはすごい物買いましたね。(笑)

ttp://chigasakioows.cool.ne.jp/ima-ikura.shtml

面白そうなのでちょっと調べてみました。上記のページによると、発行当時と現在の物価の差は四捨五入してだいたい1361倍。元の内地定価が1.7円なので、現在だと2314円。現在は定価に消費税が加わるので、総額2430円の本という計算になります。
もうちょっとデタラメな数字が出るかな?と思ったんですが、ハードカバー・ボックス入りの専門書としてはまあまあ妥当な金額になりましたね。中古価格の3000円も過不足ない金額と言えるのではないでしょうか。

ちなみに送料は現在価格で内地が245円、植民地が612円。
国内だとゆうメール(旧冊子小包)の500gまでが290円。海外だと韓国・台湾・香港・中国あたりの国際郵便料金は船便430円・航空便750円となっているため、これまた妥当~若干割安な金額だと思います。
---------- 影武者 [ 編集] URL . 09/25, 10:12 -----

>影武者さん
物価の比較なんてできるんですね
1361倍ですか(笑)
換算2430円は鉄道専門書としてはちょっとお安めではありますが
妥当な線かもしれませんね
送料も比較すると面白いものですね
---------- oomatipalk [ 編集] URL . 09/27, 01:12 -----
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